
マスキング あぁマスキング マスキング
昔々のこと。当時の彼女と冬の海に行った。
打ち上げられた海亀の死体。
不思議な形の流木。
ヌラヌラと光る海藻。
そんな物と戯れた後、僕が夢中になったのは
ただ、穴を掘ることだった。
彼女に構うこと無く、ただただ掘る。
掘り始めた理由なんて覚えてないけど。
自分の掌や棒っ切れで、掘って掘って掘ったら
180cmの躯がすっぽり納まるくらいの穴が出来た。
昼に訪れたのに、空は既に茜空。
満足した僕はその穴に入って
地平線=水平線の高さに目線を据え
しばらくその視界を楽しんでいたっけ。
やがて潮が満ちて来て
僕が僕の為に掘った僕だけの穴は
砂と海水で満たされ
数分で綺麗さっぱり消えてしまった。
無常だ。
僕もコレを読んでいる貴方も
生まれ、生きているが、いつか死んでしまう。
世界に何も残さず、全てフラットになるのは嫌だな。
そう思いながら、グルグルグルグルと
僕は今日、マスキングテープを巻いたのでした。
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